第2回 気弱な「舌」は「歯」におびえている

舌の大切さに気付く

患者さんの体調を良くしたくて、1990年ごろから、「歯の調整」に邁進していたというのは、前回お話をしましたね。
しかし、治る人は治るけれども、治らない人は全く効果がない人がいる、ということが当時一番の悩みでした。


これは、「歯科でできることはここまでです」と言い切ってよいのか?
「あとはほかの整体の先生とか、整形外科で治してください」と言っていいのかどうか、ですね。
それとも、私の腕が良くなれば、もっと上のレベルにいって、治せる確率が増えるのだろうか?
もう本当に悩みました。


しかし、あるときひらめいたのです。
「そうだ、歯の横には舌がある。もしかしてこれは、舌が原因ではないか?」
これは自分の中で、すごい発見でした。

口の中の3人の同居人

あなたの口の中には、3人の同居者がいる、と思ってください。
一人は柔らかいほっぺ。
一人は堅―い歯
一人は柔らかい「舌」です。


そして、柔らかいホッペと舌は、常に硬い歯を恐れています。
歯によって、傷ついたりするのが、怖いんです。
これがまず一つ。

下のアゴはブランコのようなもの

そして、もう一つ大事なことは、あなたの下の顎は、実はこのようにブランコになっているのです。

これを見てください。
上の顎は、頭の骨と一体化しているので動きません。
でも、下のアゴは、これはバネでつながっていますけれども、筋肉でブランブランの状態です。
噛むというのは、下のアゴが無意識に動いて、すりつぶしているのです。

下のアゴは筋肉で吊り下げられている、ブランコの状態である
下アゴはブランブランの状態で維持されている

肉食のトラなどは、垂直の動き、チョッパーです。
牛や馬などの草食系は、横にすりつぶす動き、臼のように咬みます。
人は、雑食ですからその中間ですね。
この複雑な動きを、私たちは、無意識にやっているのです。

そしてこのカムという動き。
今お話した通り、上のアゴは、頭の骨と一体化して全く動きませんので、常に下のアゴだけが動いている状態です。

これを、我々歯科の世界では、「上の歯がまな板、舌の歯が包丁」という言い方をします。

アゴの位置は何によって決まるのか?

歯科大学では、この上と下のアゴの位置関係は、何で決まるかというと、歯で決まる、と教わります。
でも、これは、いわば「食いしばっている状態」です。
確かにこの時は、アゴの位置は歯でしっかりと固定され、決まると言ってもいいですね。

でも、あなたは今、私の話を聞いて歯を食いしばっていますか?
違いますよね。
上と下の歯は空いてますよね。
これは、2ミリ程度、ほんのちょっと開いています。

実は、上の歯と下の歯が当たっている状態は、噛んでいるときしかないのです。
それは言い換えると、食事をしているときだけ、なのです。

では、1秒で一回、上下の歯が当たるとして、一食で600回噛んでいるとしたら、600秒なので、約10分。
朝昼晩600回食べるとしたら、「600秒×3=30分」は確かにその状態です。
しかし、それ以外の、「23時間30分は歯が当たっていない状態」です。

さて、その時にアゴの位置は何で決まっているか?
それが「舌」なんです。

例えば、右側の歯が舌側(内側)に倒れていたら、ベロにくっきり歯の跡がついてしまいます。

歯並びが細いと、舌に歯の跡がつく
このような歯の跡は、強い舌への刺激(舌ストレス)がある証拠であり、舌ガンの危険も増す

これは、舌への刺激(舌ストレス)となり、その結果、この人の顎はこちらにずれます。
なので、聖華に写真もらうこの人は、こんな感じで、毎日ご飯を食べ、しゃべり、歌っているのです。

咬み合わせとは、まず「舌ストレス」を無くすこと

「咬み合わせを良くする」ということは、まず、この顎のずれを元に戻さなくてはなりません。

私の最初の15年は、これをせずに歯の調整をしたことで、イマイチ治りが悪かったのです。
私だけではありません。
歯科大学では「舌を診る」ことは教わりません。
日本の歯科医学150年の歴史で、いや世界の歯科医学300年近い歴史の中で、「舌」の重要性は語られたことがなかったのです。

でも、それは当たり前といえば当たり前です。
何故ならば、これは「新しい口の中の病気」だからです。
では、次回はなぜこんな病気が出てきたのか?についてお話をしましょう。

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