第10回 歯周病の原因はストレスじゃなくキスかもしれない

今日は歯周病がどういう形でうつっていくのか?というお話をしたいと思います。
歯周病菌のうつり方は、テレビでは取り上げられることが少ないですよね。


以前、虫歯菌は親から子供に唾液を通してうつるというお話をしました。
では、歯周病菌はどうやってうつるのでしょうか。

歯周ポケットに潜んだ歯周病菌

歯周病菌と虫歯菌

歯周病菌は、虫歯菌とは住処が違います。
虫歯菌の場合は、歯の表面が住処なんですね。


ですから、永久歯に限らず乳歯にも住みつくことができるんです。
0歳の赤ちゃんでも乳歯が生えていますから、その表面に虫歯菌は住みつくんですね。
つまり、親から子にキスをした時に唾液でうつってしまうんです。

虫歯菌のついた乳歯

では歯周病菌はどこに住んでいるかと言うと、歯と歯茎の間にある歯周ポケットと言う溝です。
また、偏性嫌気性菌(へんせいけんきせいきん)と言って、空気に触れると死んでしまうという性質を持っています。
ですから、虫歯菌に比べると歯周病菌はうつりにくいんですね。

しかし一番の問題は、人から歯周病菌がうつったときに住処があるかないかなんです。

歯周ポケット

実は乳歯には、歯周ポケットというものはありません。
乳歯というのは、歯と歯茎がぴったりとくっついているから、歯周ポケットがないんです。

では、いつ頃から歯周ポケットができ始めるのか?
それは最初に生えてくる永久歯の6番という歯が出てくるときです。

前から数えて6番目の歯、これを6歳臼歯と言います。
6歳頃に最初に生えてくる永久歯で、とても大事な歯です。

大人の歯列の6歳臼歯

女性の場合は、思春期にエストロゲンという女性ホルモンの分泌量が増えます。
このエストロゲンが歯周病菌の好物なんです。
ですから、思春期性歯肉炎が起こりやすくなります。

しかし本格的に歯周ポケットができるのは、やはり大人になってからなんですね。

そしてやはり、歯周病菌も唾液によってうつります

厚生労働省のデータでは、日本人の45歳から55歳までの歯周病の罹患率、歯周ポケットの含有率というのは2011年頃に大きく減少しています。

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歯科医師の皆さん、歯科衛生士の方が頑張って注意喚起し、患者の皆さんの意識が向上したからです。
ちゃんと歯を磨いたり定期的にケアに通うようになってくれた結果、ここ何十年かで大きく減っています。
しかし近年、45歳以降は50%前後の人が歯周ポケットがありますね。

歯周ポケットがあるということは、そこに歯周病菌がたくさん潜んでいるかもしれないということです。

歯周病は性感染症?

では歯周病菌が大人にどうやってうつるのか?

率直に言うとキスでうつるんです。
キスにをすると唾液が交換されます。
大半の人は歯周ポケットが十分にあるため、キスによってうつった歯周病菌が定着してしまうんですね。

以前「歯周病は性感染症だ」と言い切った先生がいらっしゃいます。

先生曰く、歯周病が完治して歯周病菌が全くいなくなっていたのに、再発する方がいたと。
原因を調べていくと、再発した方はパートナーと仲が良くキスを頻繁にしていたそうです。
尚且つ、キスの前に歯を磨いたりする習慣がなかった。
逆にパートナーと仲が良くても、ちゃんと口腔ケアをしてキスをしていた方は再発が少なかったそうです。

また、夫婦や恋人との仲が冷え切っていたり、キスを習慣的にしない方達は再発がほとんどなかったそうです。

ですから、虫歯菌は親から子供にうつり、歯周病菌は大人同士のキスでうつる、と考えていただければ良いのではないかと思います。

まとめ

今日の注意点は3つです。

1つ目、若いうちから歯科医院へ定期的に行き、メインテナンスをやってもらって口の中の細菌や歯周病菌をできるだけ減らしておくこと。

2つ目、キスをする前にちゃんと口腔ケア、歯磨きをしてなるべく口内の菌数を減らしておくこと。

3つ目、仲が良い夫婦やカップルの場合、歯周病治療はどちらか一人ではなく二人でやること。
片方がせっかく治療しても、もう一方が治療していないとお互いに移し合うことになってしまいます。

本日は大人の歯周病講座でした。

次回からはまた舌ストレス、歯並びのお話に戻ります。
是非鏡を用意して、ご自分でも口の中を見てみてください。

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