第9回 口は身体の外か中か?

前回は、口の中は小さな地球だ、というお話をしましたね。

今日は人間とはドーナツみたいなものなんだ、というお話に加えて、歯とはどんな存在なのかという話をしたいと思います。

どこが体の外?

前回の最後に言った、口の中は体の外か?中か?という問題。
実は口の中というのは、体の外なんです。
口の他にも、意外と体の外というものはあります。

例えばがそうですね。
膀胱や、女性なら子宮もそうです。
体の外だからこそ、ばい菌が入ってくる。

つまり、外気に触れるところは外、ということです。
そして外か中かというのは、皮膚などのバリアを張ってものすごく厳しく分けているんですね。

だから体の外である口や鼻など、ばい菌が侵入して来やすいところはものすごくがっちりとした守備が張り巡らされています。
皮膚によって体の外と中はしっかり分けられていますが、実は歯というのは外と中を貫いてしまっているんですね。

例えて言うと、手に釘が刺さっているようなものです。

異常な感じがしますが、我々の体の中でこのような構造しているのは歯だけなんです。

腕に生えている釘の周りにある、デンタルプラークという歯垢。
それは、実は大便の10倍ぐらい汚いものなんです

プラークの汚さは大便並み

「大便の方が汚いに決まっているじゃないですか」
という声が聞こえてきそうですが、それは単純に量の問題なんですね。

大便よりも汚いものが歯の周りにあるのに、歯は体の中を刺している。
だから、どんどん菌が体内に入ってしまう状況になります。

鼻とか口とかの外界と接しているものは、しっかり防御システムがあります。
しかし歯の周りというのは、歯周病などになってしまった場合にバリアのようなシステムがないんです。
菌が通過して、全身にばらまかれてしまうことになります。
そして慢性病のためずっと続いてしまう、という仕組みになっているんです。

体の中に入った虫歯菌や歯周病菌は、体のあちこちを絨毯爆撃みたいに攻撃していきます。
脳では血栓を作ったり、子宮の中では羊水の中で増えたりするんですね。
菌が心臓にいってしまった場合、心筋梗塞の原因などにもなります。

どれくらい汚いか想像してみよう

ここでちょっと考えてみてください。

もし歯周ポケットが5mmあったとすると、歯は28本ですから合計で歯周ポケットの面積が大体72㎡になりますね。
これは大体手のひら1枚分なんです。
そして歯周病になっているということは、皮膚が炎症して壊れている状態です。

例えるなら、手の皮膚を剥がしてしまって、大便より汚い菌の中にドボっと突っ込んでいる状態です。
この状態で24時間365日いると、抗生物質などを飲んでも効かないと思います。
どんどんばい菌の供給の方が勝って、全身に菌が回ってしまうという状況だと思ってください。

歯の菌がなんの病気の原因に?

歯の周りのばい菌、虫歯菌や歯周病菌が原因で起こるとされている病気はたくさんあります。
肺炎、心臓病、他には心筋梗塞、糖尿病、早産、脳梗塞や脳出血もあります。
そして、リュウマチ、骨粗鬆症、メタボリックシンドロームなど、多くの病気に関係があるということが分かってきています。


特に肺炎、誤嚥性肺炎に気を付けてください。
喉の機能が衰えてくると、食べ物や唾液と一緒に菌が入りやすくなります。
やはり口の中のばい菌の量が多いと、肺や気管支に入る菌の量も多くなるんです。

そして、誤嚥性肺炎によって年間約10万人の方が亡くなっているんです。

ですから、皆さんしっかり歯科医院で歯ブラシのやり方を教わり、毎日きちんと磨いてください。


また、メンテナンス、予防に力を入れている歯科医院の衛生士さんに、定期的に口の中を綺麗にしてもらうことを是非忘れないでください。

次回は、歯周病が実はエロいうつり方をしていた、というものをお話しいたします。

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